石垣島を中心に八重山諸島全域の観光・旅行・イベント・ニュース・伝統行事など八重山にこだわった地域密着型情報を日本最南端の出版社「南山舎」がお届けします!

やいまねっと

やいまねっとメニュー
ログイン
ユーザ名:

パスワード:


パスワード紛失
無料ユーザー登録
サイト内検索
南山舎の本

月刊やいま年間定期購読
島の手仕事第14回パピルス賞受賞!
南山舎やいま文化大賞
八重山を読む メニュー
話題チャンプルー
八重山手帳2017
やえやまガイドブック
やいまねっとに広告を掲載しませんか?
自費出版のご案内

トップ  >  コラムちゃんぷる〜  >  八重山全般  >  「親日台湾」だけでいいのだろうか?|八重山コラムちゃんぷる〜

「親日台湾」だけでいいのだろうか?

文・写真 = 上水流久彦

▲対馬のスーパーにおけるハングル語表記(撮影:中村八重)

 「親日台湾」という台湾像には問題があると思っている。八重山だけでなく、日本の人々が台湾の人々と交流するときにしばしば出てくる言葉が「台湾は親日的だ」という言葉だ。この言葉は字面としては日本に対して親近感を持っているということだが、実際にはもう少し複雑だ。中国や韓国との比較が入っているからだ。
  韓国では教科書問題などで日本の国旗を燃やす、大使館の前で抗議運動をするなどがあった。中国は昨年9月の尖閣諸島の問題の時のようにすぐに交流を止めたり、輸出規制をかけたり、日本の商品の不買運動をしたりする(*1)。それらに比べると、台湾は親日的なのだ。去年の尖閣諸島問題では、台湾の抗議船も島の近くまで来たものの、それだけだった。中国のようにずっとは抗議しなかった。抗議活動は国主体ではなく、民間団体主体だった。他の問題も含めて日本への激しい抗議を台湾に見ることはほぼない。
  親日台湾像にはもうひとつ理由がある。台湾は日清戦争の後、日本に割譲され、1895年から1945年まで日本の植民地になった。他の植民地だった国では、「植民地は良くない、発展が邪魔された」と言うのに対して、台湾では日本の教育は良かった、道路や鉄道を造った等と、日本が良いことをしたと言う人がいる。そのように書かれた教科書もあった。
  八重山との交流・交易(観光などの)においても、八重山と台湾は近く、親日的だから関係をもっと深めましょうという話を調査中、見聞きした。「良い関係ですよね」とお互い語って付き合うことは、交流・交易をするうえで悪いことではない。だが、その言葉に甘えると問題が生じてくる。時に相手を軽視してしまうことがあるからだ。
  軽視で一番問題なのは、相手のことを知ろうとしないことだ。台湾と中国は一緒だと思っている人も多い。台湾の政府(正式には中華民国)も中国の政府(正式には中華人民共和国)も、中国大陸も台湾も従来は同じひとつの国と思ってはいる。だが、今はそれぞれの政府が統治をして、憲法や軍隊を持ち、そこには二つの国があるようなものだ。しかし、そうなった経緯やそこから生まれる問題を知る人は少ない。台湾が様々な時に日本に抗議をすれば違うかもしれないが、「あぁ、台湾ね」という感覚で台湾を見ている。
  台湾調査時、「台湾はもっと日本に怒るほうがいいのですか」と私は台湾の人に言われたことがある。日本と台湾の間には正式な外交関係がないため(*2)、日本の首相が台湾に行くことはない。台湾の国連加盟の応援を日本がすることもない。東アジアの国際会議の場に、台湾政府の人が呼ばれることも基本的にない。仲間はずれである。日本は中国の機嫌ばかりを伺っており、「韓国や中国のように怒るほうが、日本も気にしてくれる」という。
  八重山で調査していて不思議に思うことは、中国語の表記がとても少ないことだ。私は韓国からの観光客が年間6万人ほど来る対馬でも調査をしている。この数は八重山に来る台湾人観光客数とほぼ同じである。対馬ではあちこちで韓国の言葉で書かれた案内を見る。例えば、韓国人がよく行くスーパーでは、写真のように多くのものに韓国の言葉が書いてある。スーパーの近くには韓国の言葉が話せる人がおり、通訳が必要になれば助けてくれる。観光地のトイレにも使用後のペーパーはトイレに流してくださいと韓国の言葉で表記されている。交流活動も盛んである。対馬は朝鮮通信使(*3)の重要な場所だったこともあり、地域の祭りでは通信使行列があり、韓国との歴史を知る講座も多い。対馬市の広報誌には韓国の文化紹介のコーナーもある。対馬と釜山の郵便局どうしが姉妹提携も結んでいる。
  だが、そのような状況とは裏腹に対馬の現状は日本国内では好ましくないと思われている面もある。対馬が韓国の領土になるのではないか、韓国人に媚びているのではないか、と抗議を受ける。日本と韓国の間で何かあれば、「反日」的韓国と友好関係を結んでいる対馬の立場が問われる。そのため対馬で韓国観光客誘致し、交流を促進する関係者は、自分たちのつきあいをどう考えるかという問題に常に直面している。その緊張感が韓国との交流・交易に深みを与えていることは事実である。韓国の人々の声に耳を傾け、対馬と韓国との関係を勉強する。
  対照的に八重山は親日台湾のもとにある。台湾との交流・交易を推進する時に、その推進が国家の危機、島の危機という声で反対されることはない。でもそのことが台湾の人々の声を聞くことを疎かにさせている側面があろう。石垣の調査において台湾から移り住んだ人の話を聞くことがあった。ある人は、台湾からの観光客の扱われ方を見て、「きちんと応対されていないと思う」と語った。旅行業者、金額、スケジュール、差別感情など様々な要素のもとではあるが、安易な八重山ツアーしかないという。本当の八重山の良さを伝え、台湾の人が再度八重山に来たいと思わせる企画もあって良いと語る。台湾の状況を知り、台湾の人々の要望に耳を傾けていない点に不満なのだ。
  以前、私は八重山毎日新聞の「論壇」(2009年4月12日付け)で、八重山の情報が台湾にはほとんど流れていないことを書いた。クルーズ船の乗客の中には、インフォメーションセンターで「国際通りにはどう行けば良いのか」と聞いた人もいたという。食べるのも多くが刺身と天ぷら、うどんだ。八重山そばではない。お土産も薬やポッキーなどで、ちんすこうではない。商品を買ってもらう場合、まず先方の話を聞き、自らの商品を紹介することから始まる。だとするならば、八重山観光という商品を売るには、台湾の人々の話を聞き、八重山をよく知ってもらうことが必要だ。「八重山と台湾は近い、昔から交流があった」とだけ言う時代は終わった。

上水流久彦(かみづる・ひさひこ)プロフィール
県立広島大学教員。鹿児島生まれ。1994年〜1996年、台湾で現地調査。2001年、広島大学大学院社会科学研究科修了、博士(学術)。著書に『もっと知りたい台湾 第二版』(共著、2002年/弘文堂)、『台湾漢民族のネットワーク構築の原理-台湾の都市人類学的研究』(単著、2005年/渓水社)など。


 


運営会社情報個人情報保護方針サイトポリシーお問合せバナー広告について
 
Copyright© 2007 NANZANSHA, All rights Reserved.
本サイトに掲載されているすべての記事・画像の無断転載を禁じます。