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鍛冶工狂言

文=飯田泰彦

―農具と豊穣の関係―
 鉄が農業の生産力を向上させたことは歴史的にまちがいない。それだけに鉄は貴重なものとして尊ばれたことだろう。とりわけ、鉄鉱石や砂鉄の出ない南島において、鉄の原料や製品は島外に頼らざるをえなかった。言語学者・宮良當壮は、「鍛冶を生らす」という他動詞的な八重山方言の表現に、鍛冶打ちの苦心を見いだしている。
 さて、「鍛冶工狂言」は、その名の通り、鍛冶によって農具をつくりだす工程が演じられる。登場人物は、鍛冶主、鞴押し、大槌打ち甲乙の計四人。鍛冶のさまを見せる場面では、歌と囃子が鍛冶打ちの音と相まって、明るい律動感を生みだしている。八重山では小浜島北村、竹富島玻座間村、西表島古見村に伝承され、それぞれに異同がある。
 小浜島の鍛冶工狂言は、竹富島の本仲家の祖先から伝わったというが、どれも同根の芸能といえるだろう。伝承地のいずれにも鍛冶打ちの前に、立派な農具ができるようにといった飾口(祝詞)があり、各々の祭りの場では農耕儀礼の役割を果たしている。小浜島の鍛冶工狂言には、「あー いー鍛冶ぬ生りたり(ああ、素晴らしい道具が生まれた)、いー世は賜らりしたてぃ(豊年の世が賜わった)」というセリフがある。これは農村での暮らしが鍛冶と結びついていることを物語っている。
 この切実な願いと一見真面目な演者の態度にも、とぼけた笑いが時折のぞく。そこに何ともいえない面白さがある。
 例えば竹富島の狂言では、合わせ目も継ぎ目もない粘土のような粘りのある鉄を、鍛冶工主が「餡餅ぬ肌」にたとえると、大槌打ちの一人は「くわっち」(ご馳走)を連想して口をはさむ。
 古見村では、立派にできた農具を見て、甲が「二三日がぎすー仕事やらばん(二三日でする仕事でも)、今日一日がぎすまだぎぱらはりるんがや(今日一日でしてのけるだろう)」というと、続く乙も同様に農具を称えようとするが、「今日一日がぎすーむぬやらばん(今日一日でするものも)、二三日かかりすまだぎぱらはりるんがや(二三日かかってできるだろう)」と言い間違え、鍛冶工主に叱られてしまう。
 また、飾口、鍛冶打ちに続く結末の違いに地域の独自性がみられる。
 竹富島で鍛冶工狂言は種子取祭で演じられるが、四人が「粟ゆ作らば官ぬたみ(粟を作るのは納税のため) 芋ゆ稔らば胴ぬたみ(イモを稔らすのは自分のため)」とうたいながら、飄々とした表情で幕に入る。そこには人頭税時代の権力者に対する庶民の抵抗が風刺的に表れている。
 小浜島では結願祭に演じられるが、その結末は鍛冶の場面からウロンチン(陽春)の田園風景に一転する。できあがった犂の刃の仕上りを試すべく、二人が古謡《ウロンチンヌジラマ》を掛けあいながら、二頭仕立ての牛に犂を引かせて舞台を一巡する。
 《ウロンチンヌジラマ》は、色彩豊かなウロンチンの、朝の光景を鮮やかに描いている。島の東方をのぞむと、「梯梧や花 赤るい美しゃ 咲きばし(デイゴの花は赤く美しく咲いて)」、「百合ぬ花 白さ美しゃ 咲きばし(ユリの花が白く美しく咲いて)」、これを見ると思わずうれしくなるよ、といった内容。
 そして、「皆かてぃ囃い賜んなーな(皆さんも囃してください)」のセリフに促され、祭りの場にいる島人もうたいだす。それはまるで犂の出来栄えと春の訪れを喜び、五穀豊穣を予祝するかのようである。
 このように鍛冶工狂言は厳かななかにも笑いがあり、地域ごとに魅力ある表現で継承されている。

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