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アブジャーマの春

文=飯田泰彦

 八重山民謡《山崎ぬアブジャーマ節》は、その名のとおり、黒島山崎村のお爺さん(アブジャーマ)が主人公である。この爺さん、年甲斐もなく好色で、器量の良い娘たちを賺して騙してねんごろな間柄となるのである。ついに御嶽の後ろの大工家の娘・ンギシャマを本妻に、その隣の神司の娘・ナビシィケを妾にしてしまうという物語がうたわれている。
 「どうして?」というのも野暮であるが、その若い娘たちはアブジャーマが「とぅんな若芽」(アキノノゲシの若芽)や「苦菜若芽」(ホソバワダンの新芽)を摘んでくれたからだというのである。そんなアブジャーマの親切心、あるいは野性味にほだされたということだろうか。喜舎場永┿瓩蓮▲▲ノノゲシもホソバワダンも若芽は「味噌のあえものにして食するとおいしい」ので、「多分にこの『味噌あえ』をくれて騙したように考えられる」と推察している(『八重山民謡誌』)。
 石垣島白保では、《山崎ぬじらば》として伝承されているが、それには「褥でそーや蓑ば敷きにば(褥というのは蓑を敷いて)、枕でそーや腕ば敷きば(枕というのは腕を敷いて)」、「下から茅端ぬ我ば突きば(下からは茅端が私を突けば)、上からや叔父まぬ我ぬ突きば(上からは叔父さんが私を突けば)」といった具体的な性描写が挿入されてうたわれている。
 また、《山崎ぬあぶじゃーま節》発祥の地・黒島では、仮面をかぶったお爺さん・お婆さんのほか、素面の若い娘が登場する舞踊劇としても継承されている。つまり、アブゼーマ(黒島ではこう言う)が大工家の娘と逢引し、妻に見つかるまでの様子が芝居仕立てでコミカルに描かれているのである。
 今、手元に黒島出身の玉代勢泰興氏が編集した戯曲「山崎ぬアブゼーマ」がある。これは演者の手控えとして作られた冊子であろうか、登場人物の心情やそれに伴った所作など、歌詞に合わせてこと細かに記されている。例えば、アブゼーマと美童の出会いはこんな調子である。
「アブゼーマは、美童の存在に気付き、軽く手をたたき喜びの表現をする。/(持物を急いで片付けて美童の方へチョッカイを出そうと後方よりしのび肩へ軽く手をかける。)/そこで、美童は、おどろきの表情をとり、下手の方へ逃げようとする。……/アブゼーマは、決して危害は加えないからというような態度を取るが、美童は警戒しながら再度トンナ(秋野のげし)を採り始める。……/アブゼーマは、二、三本のトンナを取って来て美童に渡そうとするが、美童はすぐには受けとらない。/(二度程度拒否をする、三度目には仕方がなく受けとる。)/アブゼーマは、これ幸いと(手をたたく)…別の場所にたくさんあるのでそこに採りに行こうと誘いをかける。アブゼーマは、美童の腕をとり上手前面の方へ連れて行き、ミノで周辺の掃除をし、ミノを敷いて美童を座らす/しばらく美童とアブゼーマの世界が続く……/手をとり合い、語り合い……」
 ここに一切のセリフはなく、話の展開は歌詞によるところが大きい。ストーリーは単純だが、新劇を思わせる、複雑な心の葛藤が大真面目に描写されていて面白い。
 元々、この舞踊劇「アブゼーマ」は仮面をかけずに演じられたそうだ。いつからか石垣島四カ字の旧盆アンガマの仮面が用いられるようになったのだという。その理由は定かではないが、日常世界から飛躍させる、仮面の力を借りようとしたのかもしれない。正面切って卑猥になってもいけないし、やはり素面で好色なお爺さんを演じるのは至難の技であろう。また、小憎たらしく愛らしい表情の仮面はアブゼーマの役柄にぴったりである。

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