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マツンガニ

米屋陽一(日本民話の会会員)
石垣島民話「マツンガニ」

造りの歌はね、ユッサシ節とね、マツンガニ。マツンガニジラバといってね。むかしマツンガニという人がね、非常に苦労してて、お父さんも早く亡くなられ、お母さんも早く亡くなられてね、ばあちゃん弟なんかを自分一人でよう、養ってよう。

イモをね、その耕したイモのくず、このいいイモ、上等なイモだけは掘って、作った人が持ってきて食べるんだがよう、イモのくずとか虫のついたものは捨てるですよ。畑であれを掘ってきてね、マツンガニという人はね、ばあちゃんを養い弟なんかを養っておったんだが。畑にいってね、人の残したイモくずをね、取りに行ったところがね、あの主が「あなたはわたくしのイモまでドロボウしてる」ってね。なぶり殺そうとした。
「わたくしはドロボウもしていない、イモのくずを取ったんだけれどよう」って。
くずイモはまただれでも取ってもいいんですよ。耕したあとは捨てるんだから。畑の中にあるくずイモを取りに行ったところが、畑の主がね、わたくしのイモまでも盗んでいるということで、引っ張られてなぶられてね。
イモ持ってこねえで、家に帰って。泣いてきたから、ばあちゃんが、
「ああほんとうにかわいそうだねえ、お父さんお母さんいないのでね、あなたはこんなに苦労してね、わたくしや弟なんかねえ、養ってくれて、今日はほんとうにドロボウもしないのによう、ドロボウといってほんとうにかわいそうにね」といって、ばあちゃんも泣いてよう。
「あなたはねえ、男でほんとに頭もいいからよう、あなたも大きくなったらよう、健康でね、イモも作り、野菜も作ってね、わたくしも弟なんかも養ってくれよ。けっしてあなたはね、大きくなってね、いろいろと人のためによ、あなたは今日泣かれたんだから、あんたの苦労はね、一生忘れんでね、がんばれよ」っていってね。
あれから大きくなってね、山に行って木を伐ってね、丈夫な木を持ってきて、大工を頼んで家を造りね、それから、弟なんか呼びあってね、非常に幸福になったということですよ。
あのマツンガニのジラバとね、今申し上げたユッサシ節よ、これは家造りにやる。みんなでよ、合唱しますよ。

ジラバ、ユンタというのはね、人頭税時代によ、その農民が作って農作業してコメ、アワ、ヒエとかねえ、男が作ってくるでしょう、女はまた機織りしてやってるでしょう、ジラバがないとね、歌なんかをやらんとですね、みんな冗談しちゃってよ、仕事がはかどらんからよう。この首里の王様までもね、このジラバ、ユンタをねえ、ともどもに歌ってねえ、田草取りとか、コメ刈りとか、田耕すときもね、だれもみんな歌をやってね、励まし合ってね、歌うたってお互い喜んでね。だから、わたくしなんか田草取りなんかよ、七、八人の男女がいてよ、非常にこのジラバ、ユンタをうたってね、この田草取りをね。どんどんジラバ、ユンタをやるとね、だれも冗談もせぬ、仕事もはかどるんですよ。だから、非常にいいことですよ。
今頃は文化が進歩してね、若い者なんかは機械の世の中になってきたもんだから、昔のジラバ、ユンタなんかも多くはもう忘れてる。若い者なんかはわからんからうたえない。あとね、わたくしなんかいくたりか残っているよ、ジラバ、ユンタわかる人は。かわいそうですよ。わたくしら老人がよ、ジラバ、ユンタ、家造りの歌なんかよ、やるんだがよ、わたくしなんかがよ、死ぬとね、若い者なんかよ、うたえない、なくなるよ。 わたくしは、むかしからのここの土人です。というのは、わたくしの父方がね、命拾いした、あのヨナモリに登ってね、命拾いした。またね、母方はよ、今のうしろの北側よ、そこにトーヤのターヤシキっていうの、10の田んぼというのがありますがねぇ、あちらに田んぼを作ってね、おられたそうだがよ。


>熊谷溢夫著『美しい自然があるからみんな元気で生きられる。』
>熊谷溢夫の切り絵・ポストカード

(情報やいま2002年5月号より)

 


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